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  • 土屋晶義

新規商材開発の難しさ

更新日:2020年6月22日


1)なぜガラ携ができたのか

 

 2001年クリスマスイブの広州駐在開始時、現地で固定電話があまり普及していない中、

市内の日本食レストランの女子従業員全員が給与2か月分程もする『英数メールと20万画素のカメラ付き携帯』を持っていることに驚かされました。

 女子従業員はほぼ全員地方からの出稼ぎで、都市で生活するには必需品であるとのこと。


 ほどなくして、某日本企業が中国本社の強いリクエストに応える為、中文表記できない米国向け仕様のものを、中国向けに供給しましたが、結果として、「メールで中文が表示できないものを中国で売るなんて!」と大バッシングを受けることになったとのことです。

 

 中国仕様のものができる前に、米国仕様を回してでも現地営業リクエストに応えたかったという、売る側の事情だけで、中国市場のニーズを正しく把握していなかったことが主因と分析されたとのことです。

 半導体の塊であり、ありったけの機能を入れ込むことしか考えていなかった当時の日本の携帯メーカーの事業戦略の延長線上で、なるべくしてガラ携が誕生したといわれました。

 また、市場が要求していない不要な機能やだれも読まない分厚い取説など、顧客のニーズを理解することに欠けていたとも指摘されていました。



2)プロダクトアウト


 上記のような作る側の理論で事業展開することを、プロダクトアウトと言います。

 優秀な研究者、製造技術、販売網をもっている自社製品が売れないわけはないという、

姿勢であり、日本企業にありがちであることを指摘するマーケティングの書籍も多数散見されます。

 この姿勢を続けるなら、市場ニーズにマッチしない限り、製品を販売するのは難しいと

考えられますし、技術力に自信を持つ企業ほど、この傾向が強いと企業相談からも常々痛感していました。



3)マーケットイン


 一方、上記の対極にあるのが、市場で求められているものを供給するという、マーケットインの考え方です。

 現在グローバル携帯市場をリードするアップル社の携帯事業のスタンスであることでも有名と言えます。

⇒テキサス州のメカ音痴のおばあさんでも使いこなせるようにする為、タッチパネルを採用

⇒取説は、電子化し、分厚い取説を不要とした分コスト削減に

           (出所:成功を引き寄せるマーケティング入門 著者: 森岡 毅 氏)

 業界では、取説なしで売れる訳がないと言われていましたが、結果はご存じのとおりとなっています。


 日本では過去に技術力で成功した企業、技術力がある企業ほど技術依存が大きく、だからこそ技術力に過信しすぎる結果、マーケットインの発想になりにくいという肌感覚がありますし、マーケティングの書籍でも指摘されています。



4)指名買いされる商材


 ドイツ駐在時代、欧州中を飛び回って先端技術商材の開発を7年半行ってきました。

 当時、欧州から日本に紹介する商材が当たる確率は、千三つ(3/1000)や 万三つと言われていました。実際、なんとか売りにつながったのは、ほとんど事業部門からの依頼にもとづく、指名買いの商材と言っても過言ではありませんでした。

 どんなに優れた商材でも、紹介する側がいくらその気になっていても、顧客ニーズに的確

に対応できなければ、販売に至らない現実をいやというほど、経験してきました。


 最も上手くいったと自負する新規商材開発も指名買いによるものでした。

 それは本社専務とドイツライン河畔の超精密分析装置メーカーを訪問後の帰りの車中で

専務から輸入総代理店の勧めを受けました。

 この装置は、物質表面の原子配列をCG表示できる特殊な顕微鏡で、世界中の先端研究所でデファクト的に使用され、欧米留学中の国立研究機間や大学の一流の研究者が帰国して指名買いをしてもらえる可能性が高いことに期待して契約にこぎつけました。

 実際、専務が社長兼務する基礎研究所で全社の強力なバックアップを得て、輸入販売事業を展開して合計約150台、約100億円をほぼ指名買いにより販売し、毎年事業計画を達成することができました。





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